駒の書体

将棋の駒には、様々な書体があり、有名なものでは四大書体と呼ばれる「菱湖、錦旗、水無瀬、源兵衛清安」があります。

一聖工房では、この四大書体をはじめ、以下の31種類の製作が可能です。

菱湖、錦旗、水無瀬、源兵衛清安、俊則書、蜀紅、瑞光、王羲之、長禄、坂田好、宗歩好、山華石、隺園、酔棋好、淇洲書、昇龍斎、無剣、博堂、木村名人書、鵞堂、金龍、阿里、六清書、三邨、峰書、新魚龍、安清、猛龍、探山、愛香書、一字書

まずは11書体を以下に紹介しました。
画像はいずれも「一聖作」の駒です。
今後、さらに追加していく予定です。

完成駒の商品をお選びの際に、書体の特徴や起源をお知りになっていただくことで、より駒の魅力が伝われば幸いです。

オーダーメイドで、お好みの書体を選んでいただいて駒を作成することも予定しています。
お楽しみにしていてください。

菱湖

「菱湖」のサンプル(盛上駒)

四大書体の1つ。
羽生善治先生、中原誠十六世名人をはじめ、多くのプロ棋士やアマが好んで使っている書体です。
流れるような筆遣いに、美しさと勢いがあります。
江戸後期の書家、巻菱湖(まきのりょうこ)の手本字から大阪の棋士 高濱 禎(たかはま てい)先生が駒字を作り、豊島龍山師に製作を依頼してできたものが始まりだそうです。
菱湖も、巻菱湖も同じ書体です。
玉将の「玉」の点の位置や、歩兵の「歩」の最終画の跳ねなど、多くの特徴があります。
当工房で最も製作数の多い書体です。

錦旗

「錦旗」のサンプル(彫り駒)

四大書体の1つ。
「錦旗で始まり錦旗で終わる」と言われるほど、オーソドックスで親しまれています。太字で力強い書体です。
江戸時代の将棋三家の一つ、大橋本家に伝わる後水尾天皇の書を、豊島龍山師が筆写したのが起源とされています。
幕末の「錦の御旗」からとって「錦旗」と名づけたとか。
角行の「角」の字が小さく、「行」が幅広でどっしりしているのが代表的な特徴です。

水無瀬

「水無瀬」のサンプル(彫り駒)

四大書体の1つ。
整った読みやすい字に、跳ねなど雅な趣も感じられる、人気の書体です。
駒づくりの歴史の中でも大きな影響をもたらした書体で、江戸時代に公家の水無瀬家が、4代にわたって駒名を書いてきたものが源流となっています。
玉将の「玉」の縦棒が太く、点が中央の横棒より上にあるのが特徴です。
「と」の最終画が、くるん、と跳ねていたり、竜王、成桂、成香などの最後が髭になっていたりと、裏面も特徴的です。

源兵衛清安

「源兵衛清安」のサンプル(盛上駒)

四大書体の1つ。
クラシックで、広く人気を得ている書体です。
江戸時代から伝わっていること以外は、由来がよく分かっていません。
駒の五角形に、バランスよく字が配置されているのが特徴です。
上部の字は小さく、下部の字は大きく。
特に王将・金将・銀将の「将」の字は、2本の縦棒が下広の台形状で、安定感があります。

俊則書

「俊則書」のサンプル(盛上駒)

駒仲間が加賀の骨董品店にて入手した書き駒の書体が、あまりに魅力的だったので、その写しをもとに復活させ、盛上駒等を製作しています。
江戸時代のもののようですが、詳しい由来は分かっておりません。
駒尻に「俊則(花押)」と漆書きされていたことから「俊則書」と命名しました。
全体的に、流れるような曲線的な筆運びが美しく、「将」の点や「歩兵」の最終画などは太字で力強さを感じます。
詳しくは「俊則」書の復活のページをご覧になってください。

蜀紅

「蜀紅」のサンプル(彫り駒)

大阪彫りの書体の1つで、八代目駒権師が「命を削って挑んだ」と言われています。
その特徴は、ド迫力の太字&超深彫り。
当工房では、さらに細い部分を極限まで細くしており、太字がより際立ちます。
王将、玉将の「王」「玉」の縦棒の太さ・深さは、見るだけでなく、ぜひ触って味わっていただきたいです。
八代目のご息女、九代目駒権師にご許可をいただき、製作しております。

瑞光

「瑞光」のサンプル(彫り駒)

大阪彫りの書体の1つで、明治期に、八代目駒権師が墨書駒で作ったのが起源のようです。
表裏ともに、太字の隷書で書かれた、どっしりとした書体です。
「将」の点が横長であること、ほとんどの字の横棒の最後が太く力強く払いあげられていることなどが特徴です。
珍しい書体の中でも、存在感のある書体です。

王羲之

「王羲之」のサンプル(彫り駒)

中国の政治家であり、書聖ともたたえられる王羲之氏の書をもとにしたとされる書体です。
行書、草書などと組み合わせ、 流麗な氏の書が、駒の中で躍動しています。
「王」と「玉」で、点以外で書き方が大きく異なっています(菱湖も同様)。
字を崩していながら読みやすい、人気の書体です。

長禄

「長禄」のサンプル(彫り駒)

東京の薬店「守田寶丹」(もりたほうたん)の店主の書がもとになった行書の書体です。
9代目 守田治兵衛氏の書は、商家の看板に使われるなど、縁起物とたたえられ、その書の号が「長禄」でした。
それを豊島龍山師が駒銘として用いたようです。
踊っているようで流れるような筆遣いはまさに独特で、ひと目で「長禄」と分かり、えも言われぬ魅力があります。
成香などは、ひらがなの「ふ」にしか見えません。
メジャーな駒の次に欲しくなる、代表的な人気書体です。

坂田好

「坂田好」のサンプル(盛上駒)

表字が篆書、裏字が楷書の筋彫り仕上げ、と個性的な書体です。
伝説の将棋指し、坂田三吉氏は文盲で、書家の中村眉山氏が「馬」という字を教えたそうです。
その眉山氏の書いた駒字で、坂田氏の後援者たちから記念の将棋大会の折に贈られたもの、が始まりとのこと。
根強い人気のある書体の1つです。

宗歩好

「宗歩好」のサンプル(彫り駒)

どっしりとした安定感と、勢いを感じる書体です。
幕末の棋聖、天野宗歩が好んだというイメージで、奥野一香師が作成したのが始まり。
一香師の宗歩好は、タイトル戦の名人戦で長らく使われてきた「関東の名人駒」として有名です。
「安清」をベースにして作られたようですが、歩兵の「歩」の短い縦棒が無いなど、違いがあります。
双玉や、三玉で作られることが多い書体です。

他、随時追加公開予定